フリーランスとしてある程度の収入を得られると、法人化するか検討する方もいるでしょう。
しかし、フリーランスのままでいる場合と、どちらが節税につながるか分からないために、法人化を迷っている方は多いのではないでしょうか。
そこで、本記事では、一人社長が法人化した場合に法人としてかかる税金と、個人としてかかる税金を紹介します。
さらに、法人ができる節税対策も併せて見ていきましょう。
ココがポイント
一人社長には個人と法人に税金がかかる
一人社長の報酬によって所得税が変わる
法人にはさまざまな節税対策がある
一人社長の税金はいくら?
法人化すると、フリーランスのときとは異なる税金がかかります。計上できる経費の項目も多くなるため、場合によっては個人事業主のときより税金が安く済みます。
ここでは、法人にかかる税金と個人にかかる税金に分けてご紹介します。
法人にかかる税金
法人になると、主に以下の税金がかかります。
種類 | 内容 | 税率 |
法人税 | 法人の利益に対して課せられる税金 | 15%~23.2% (法人の種類や資本金額などによって異なる) |
法人住民税 | 会社を登記している都道府県・市町村に納める税金 | 1.8%~10.4% (都道府県・市町村によって異なる) |
法人事業税 | 事業所などのある都道府県で事業を営んでいることに対する税金 | 所得・都道府県などによって異なる |
消費税 | 商品やサービスの提供に対して課される税金 | 8.0%~10% (提供されたものによって異なる) |
固定資産税 | 事業に使われる土地や家屋に課される税金 | 1.4% (課税する地域や財政状況によっては引き上げられる) |
個人にかかる税金
法人化すると、一人社長の収入は法人から役員報酬として受け取る形になります。役員報酬は税制上、給与所得と同じ扱いになるため、所得税などがかかります。
ここでは、役員報酬の金額ごとにかかる所得税のシミュレーションをみていきましょう。
役員報酬が100万円の場合
役員報酬を100万円に設定した場合、所得税はかかりません。
所得税額を算出するには、まず課税所得(課税の対象となる所得金額)を求める必要があります。
役員報酬100万円の場合、役員報酬100万円-基礎控除48万円-給与所得控除55万円で計算できるため、課税所得が0円だとわかります。課税の対象となる所得がないため、所得税はかかりません。
役員報酬が200万円の場合
役員報酬を200万円にした場合、所得税は最大48,500円です。
役員報酬が200万円の場合、課税所得は、役員報酬200万円-基礎控除48万円-給与所得控除55万円=97万円です。
所得税額を求めるには、課税所得によって定められた税率を掛け、税額控除を引くことで導きます。
したがって、課税所得が97万円の場合、税率は5%、控除額は0円となるため、課税所得97万円×税率5%-控除額0円=48,500円だとわかります。
役員報酬が400万円の場合
役員報酬を400万円にすると、所得税は最大で199,500円となり、役員報酬が200万円以下よりも大幅に高くなります。
役員報酬が400万円の場合、課税所得は、役員報酬400万円-基礎控除48万円-給与所得控除55万円=297万円となります。課税所得が297万円だと、税率10%、控除額97,500円になるため、課税所得297万×税率10%-給与所得控除97,500=199,500円です。
役員報酬が600万円の場合
役員報酬が600万円の場合、所得税額は最大で566,500円です。
課税所得は、役員報酬600万円-基礎控除48万円-給与所得控除55万円のため、497万円となります。
課税所得が497万円の場合、税率20%、控除額427,500円のため、課税所得497万円×税率20%-控除額427,500円=566,500円だとわかります。
役員報酬が800万円の場合
役員報酬が800万円だと、所得税額は最大で967,100円です。課税所得は、役員報酬800万円-基礎控除48万円-給与所得控除55万円=697万円です。
課税所得が697万円の場合は、税率23%、控除額636,000円のため、課税所得697万円×税率23%-控除額636,000円=967,100円となります。
役員報酬が1,000万円の場合
役員報酬を1,000万円にすると、所得税は最大1,427,100円のため、実際に支払う所得税額が100万円を超える可能性があります。
課税所得は役員報酬1,000万円-基礎控除48万円-給与所得控除55万円=897万円です。
課税所得が897万円の場合、税率23%、控除額636,000円となるため、所得税は課税所得897万円×税率23%-控除額636,000円=1,427,100円だとわかります。
【緊急対策編】一人社長が注目すべき節税チェックリスト1~6
一人社長が事業をおこなっていると、資金繰りが上手くいかず、緊急で節税対策をしなければならないときもあるでしょう。
ここでは、そんな時にできる節税方法を6つご紹介します。
1.役員賞与を支給する
経営者など役員に対する賞与を税務上の規定に従って支給できれば、損金算入できるため、法人税を抑えることができ、節税できます。税務上の規定というのは「事前確定届出給与」の届け出をすることです。
申請無しで役員賞与を支給すると損金と認められないため、法人税の課税対象となり、個人としての所得税も徴収されることから二重課税となるので注意しましょう。
「事前確定届出給与」の手続きは、国税庁のホームページや税務署から届出書と付表を入手し、議事録とあわせて、管轄税務署に持参するか送付すればできます。ただし、一定の期限内に提出しないと損金とは認められなくなるため、期日内に手続きしましょう。
2.30万円未満の少額資産を購入する
青色申告法人で一定の中小企業者であれば、減価償却資産のうち30万円未満については、取得した年度に一括で損金に計上できます。
この制度は「中小企業者等の少額減価償却資産の取得価額の損金算入の特例」と呼ばれています。
減価償却で処理すると、取得価額を償却率で掛けた金額しか経費にできないため、一括で損金計上した場合と比較すると、節税効果に差が出ます。
たとえば、耐用年数4年の機械を20万円で購入し、定額法を使って減価償却資産として計上しようとすると、最初の年は5万円しか計上できません。一方、特例を利用した場合は20万円を一括で計上せきるため、15万円もの差額があります。
特例を適用させるには、確定申告の際に少額減価償却資産の取引値額に関する明細書を添付する必要があるため、多少の手間がかかります。また、土地や骨とう品など、時間が経っても価値の下がらない資産は対象外です。
3.1年分の事務用消耗品をまとめて購入する
消耗品等は原則として使用した際に損金として処理しますが、法人の場合、以下3点の要件を満たしていれば、購入した際に損金計上することが可能です。(法人税基本通達2-2-15)
- 毎年おおむね一定数量を購入していること
- 経常的に消費するものであること
- 毎期継続して、この処理方法を適用すること
そのため、ペンやノート、ホチキスなど、1年分の事務消耗品をまとめて購入すれば、その分を経費にできるため、節税につながります。
ただし、消耗品等は原則的に使用した際に経費に計上するため、節税対策として期末に大量購入すると貯蔵品として資産計上することになります。また、消耗品等に該当しない品目は計上できません。
4.視察旅行を計画する
福利厚生としての社員旅行は従業員だけが対象となるため、一人社長が社員旅行に行く場合、経費にできません。しかし、業務上必要な視察旅行や調査旅行であれば、旅費交通費として経費に計上できます。そのため、節税対策として視察旅行などを計画するのも1つの手です。
ただし、名目だけ視察旅行にしておき、社員旅行やプライベートな旅行をするとことは認められず、税務調査の際に発覚した場合は、追徴課税の対象となる可能性があります。
あくまでも、旅費交通費として計上できる対象は、調査目的のみということを留意しておきましょう。
5.取引先に還元する
法人の場合、得意先などに接待、供応、慰安、贈答などをする際は、交際費等として経費に計上できます。そのため、取引先にお中元などを贈ったりすれば、経費にできるため、節税できます。ほかにも、取引先との接待の際にかかった飲食費なども計上することが可能です。
ただし、交際費等として計上できる内容には限りがあります。また、計上できる金額は資本金や出資金の額によって異なるため、注意が必要です。
6.決算期を変更する
法人だと、決算日を何度でも自由に設定できます。そのため、大きな利益が発生する前に決算期を切り上げれば、納める法人税の金額を抑えられるため、節税につながります。
一人社長が決算期を変更するには、以下3つの手続きをおこないます。
- みなし臨時株主総会にて定款の変更を可決させる
- 定款を変更する
- 税務署にて異動届出書を提出する
なお、事業年度を短縮すると納税が前倒しになるため、一時的にお金が必要になり、資金繰りが難しくなる場合があります。
【実質的な内部留保編】一人社長が注目すべき節税チェックリスト7~13
一人社長の節税には、内部留保を貯めることが重要です。内部留保とは、利益から役員報酬や税金など社外に流出する分を除いて、社内に蓄積される部分を指します。
ここでは、お金を実質的な内部留保にする方法を7つご紹介します。
7.役員報酬を最適化する
役員報酬を高額に設定すると、法人の利益が少なくなるため、法人税など会社として納める税金は少なくなります。
一方で、個人としての所得は高くなるため、所得税など個人として支払う税金は高くなります。
そのため、内部留保を貯めるためには、最も節税効果の期待できる金額に設定することが重要です。
一人社長が役員報酬を変更する場合は、みなし株主総会の議事録を作成し、事業年度開始から3か月以内におこなう必要があります。
4か月以降から翌年度までに変更しようとすると、役員報酬を増額しても元の金額分しか経費計上できないなどのデメリットがあります。また、不当に高い報酬は経費として計上できないため、注意が必要です。
8.配偶者に給与を支払う
配偶者を役員にし、事務作業や書類整理などを手伝ってもらった対価として給与を支払えば、その分を経費に計上できるほか、世帯として手元に残るお金を増やせます。
所得税の算出には累進課税制度が採用されているため、所得が大きいほど税率が高くなります。
そのため、事業に従事している複数の役員に分散して給与を支払う形にした方が、世帯全体の所得税を抑えることが可能です。
ただし、社長の親族や、経営に影響力を持つ場合など一定の要件を満たすと、税法上のみなし役員に認定されます。その場合は、役員報酬と同じ扱いになり、届出していない臨時ボーナスを損金にできないなどの制限がかかります。
9.出張旅費規程を設ける
出張旅費規程とは、出張の際にかかる宿泊費や接待交際費、旅費日当などの取り扱いが定められた規程です。内容や金額に法律上の明確なルールがないため、自社で決めることが可能です。
出張旅費規程で定められた支出は経費に計上できるため、節税効果があります。
デメリットとしては、作成に手間がかかる点と、税務調査によって不当に多額だと判断された場合は損金に算入できない点が挙げられます。
しかし、出張手当の適性価格に明確な基準はないため、相場を参考に決めることがおすすめです。相場は、役職や出張先、宿泊の有無によって異なります。たとえば、日帰り出張における日当は取締役で3,000円程度が相場となっています。国内出張(宿泊)なら3,500円程度、海外だと5,000円程度が目安です。
10.小規模企業共済に加入する
小規模企業共済とは、従業員が20人以下(一定の業種を除くサービス業などは5人以下)の個人事業主や会社の経営者、役員などのために設けられた、積み立てによる退職金制度です。
掛金の納付期間に応じて事業資金等を借り入れできるため、内部留保を貯めるのに効果的です。
掛金月額は1,000円~70,000円のうち500円単位で自由に選択でき、全額が小規模起業共済等掛金控除の対象になるため、節税効果が期待できます。
ただし、小規模企業共済の掛金は、契約者自身の収入から支払うため、会社の損金や経費には算入できません。とはいえ、所得税から控除できることから、個人の手元に残るお金を増やせるメリットがあります。
11.中小企業退職金共済制度に加入する
中小企業退職金共済制度(中退共)とは、独力では退職金制度を設けることが難しい中小企業向けに、事業主による掛金の支払いと国の援助によって退職金を支払う仕組みをつくる制度です。法人化した一人社長の場合、掛金の全額を損金に算入できるため、内部留保を必要以上に減らさずに済みます。
ただし、中退共は従業員全員が加入する必要があります。また、役員は原則として加入できないため、注意が必要です。一度決めた掛け金の減額が難しい点もデメリットです。
12.中小企業倒産防止共済制度に加入する
中小企業倒産防止共済制度(経営セーフティ共済)とは、月々に一定の掛金を支払うことで、取引先が倒産した際に無担保・無保証人で掛金の10倍(8,000万円)まで借り入れできる制度です。
たとえ取引先事業者が倒産していなくても、一時貸付金として事業性資金を借り入れできるため、内部留保を厚くできます。
ただし、一時貸付金の限度額は解約手当金の95%です。また、返済方法は期限一括償還で、変動型の利息を一括で前払いすることになります。
13.法人保険に加入する
法人保険とは、法人経営者向けの保険商品を指します。
終身保険や定期保険、養老保険などがありますが、商品によっては積み立て実績に応じて解約返戻金額を限度に借り入れできるため、内部留保を貯めることが可能です。
また、保険料は損金に計上できる場合があるため、該当年度の法人税を抑えられ、内部留保を余計に減らさずに済みます。ただし、全額を損金に計上できる保険商品には以下3つの条件があり、特例が認められない商品や保険料の場合、保険料の一部しか損金計上できません。
- 積立型の定期保険のうち、限られたプラン(年30万円以下の保険料)
- 掛け捨てタイプの生命保険
- 終身医療保険などの短期払い(年30万円以下の保険料)
また、法人保険は保険料を定期的に支払わなければならないため、資金繰りを難しくさせる可能性もあります。ほかにも、退職時などに保険を解約して積み立てていた分を受け取ると、課税対象となるため、役員の退職金やボーナス、設備投資の費用として損金に計上するなどの対策を考える必要があります。
【長期編】一人社長が注目すべき節税チェックリスト14~17
一人社長ができる節税対策の中には、長期的に考えると効果を発揮するものもあります。
ここでは、そんな節税方法を4つご紹介します。
14.社用車を購入して減価償却する
自動車が必要な事業をおこなっている場合、社用車として購入すれば、会社の固定資産となるため、減価償却の対象になります。また、維持するための費用も経費に計上できるため、長期的な節税につながります。
ただし、車の使用頻度に対してランニングコストが高いと節税にならず、財政に悪影響を及ぼすため、安易に購入するのはおすすめできません。また、購入した時期が決算日に近いほど、その年に減価償却費として計上できる金額が少なくなるため、注意が必要です。
そのほか、ローンを組んで購入した場合は減価償却に変えることで、経費計上が可能です。この場合は、利息の支払いも経費にできることから、節税効果も期待できるでしょう。
15.開発費や市場調査、マーケティング費を経費に計上する
事業を発展させるためにかかった費用は経費にできるため、開発費や市場調査、マーケティング費を計上すれば、長期的な節税につながります。開発費は、費用の効果が支出した年度だけではなく翌年度以降に及ぶため、繰延資産に該当し、自社で任意償却することが可能です。
市場調査やマーケティング費などは意味が広いため、広告宣伝費など、どの項目に当たるか事前に確認することをおすすめします。経費として計上できるかどうかはケースによるからです。
16.自宅を社宅にして家賃を経費にする
個人事業主が家賃を経費にする場合は、事業用に使用している部分しか計上できません。
しかし、法人成りすれば、自宅を会社名義の社宅にすることで居住用の家賃も経費にできるため、個人事業主より大きな節税効果があり、長期に渡って節税できます。
自宅を社宅にする際は、税務調査で不利にならないよう、事前に社内規定を作成し、社宅制度を設ける必要があります。
また、適正な家賃を徴収し、豪華社宅に該当しないようにしなければ、給与課税されるため、注意しましょう。
17.事務所の賃料や保険料などの分割払いを1年分一括払いにする
事務所の賃料や保険料など、分割で支払っていた費用を1年分一括で支払った場合には、短期前払費用として計上できます。
分割で支払ったときよりも大きな金額を経費として計上できるため、支出した事業年度の節税効果が大きいです。短期前払費用として認められるには、法人が「支払った日から1年以内に役務提供を受ける」ことや「支払った額に相当する金額を継続して支払った事業年度に損金計上する」などの条件を満たしている必要があります。
短期前払費用として認められず、前払費用に該当する場合は損金に計上できないため、注意が必要です。
【繰り延べ編】一人社長が注目すべき節税チェックリスト18~21
一人社長ができる節税に、法人税を繰り延べする方法が挙げられます。
ここでは、法人税の支払いを先延ばしにできる節税方法を4つご紹介します。
18.決算月以前の分を未払計上する
未払計上とは、料金の支払いが翌事業年度以降になるものとして会計処理することです。
実際の支払いが当期におこなわれていなくても、当期の経費に計上できるため、会計上の利益を抑えられ、その分の法人税を翌期に繰り延べできます。
ただし、未払計上できるものは限られています。また、同じ費用は毎期同様の会計処理をする必要があるため、一度未払計上したものは、翌期以降も同様の会計処理をする必要があります。
19.売上計上の基準を変更する
売上計上基準とは、売上を計上するタイミングを定めたルールです。どの基準を採用するかによって会計上の利益などが変わるため、上手く作用すれば、法人税などを繰り延べできます。
売上計上の基準は、ひとたび採用すると正当な理由がない限り変更できません。会社の業績にも大きく関わるため、専門家に相談しながら慎重に決めることが重要です。
20.特別償却を行う
特別償却とは、取得価額の30%を通常の減価償却費とは別に償却できる制度です。
通常の減価償却だけを使った場合より経費を多く計上できるため、法人税を抑えることができます。償却不足額は翌事業年度に限り、繰り越すことができます。
ただし、特別償却が認められる業者は、青色申告を済ませた法人の中でも限られた会社のみです。また、特別償却が適用される資産も決まっています。
税額控除制度を利用している場合は特別償却制度との併用ができない点も注意が必要です。
21.即時償却の適用を受ける
即時償却とは、一定の設備を減価償却に代わって、投資した年に取得価額の100%を経費に計上できる制度です。減価償却とは異なり、前倒しで一括して経費にできるため、法人税の支払いを繰り延べできます。
ただし、即時償却が適用されるには、以下5つの条件があります。
- 青色申告をしている中小企業など
- 中小企業経営強化税制の認定を受けている中小企業など
- 平成29年4月1日から令和5年3月31日に投資したもの
- 経営力向上のための設備投資
- 指定事業の用に供した設備投資
【お金が減らない編】一人社長が注目すべき節税チェックリスト22~27
一人社長ができる節税として、会社のお金が減らないよう制度を利用したり、計上方法を工夫したりする方法があります。
ここでは、そんな節税対策を6つご紹介します。
22.「所得拡大税制」で税額控除を受ける
「所得拡大促進税制」は、青色申告をした中小企業などが、一定の要件を満たしたうえで、前年度より給与などの支給額を増やした場合、その増加額の一部を法人税から税額控除できる制度です。
法人税を抑えたうえで一人社長の給与を上げられるため、納税によってお金が減る度合いをゆるやかにできます。
「所得拡大促進税制」は、雇用者への給与などの支給額が前年度より1.5%以上増えたことが要件で、令和3年4月1日から令和4年3月31日の間に事業を開始した中小企業などが対象でした。
そのため、これから法人化する場合は適用されません。
しかし、令和4年の税制改正によって「賃上げ促進税法」という新たな制度に引き継がれました。そのため、令和4年4月1日から令和6年3月31日までに事業を開始した場合は、所得拡大促進税制をより拡充した税制が適用され、最大40%の控除率を受けられます。
23.予定納税の代わりに仮決算をおこなう
法人における予定納税とは、前事業年度の税額をもとに法人税をあらかじめ納付することです。仮決算とは、事業開始から6か月間を事業年度とみなして中間決済をおこない、中間申告をする方法です。
前期と比べて業績が良くない場合は、仮決算による中間報告をした方が納税額を引き下げられるため、会社のお金を余計に減らさずに済みます。
ただし、算出した中間納付税額が前年度の確定法人税額の半分を上回る場合などは、仮決算による中間申告ができないため、注意が必要です。
24.欠損金の繰戻還付を利用する
青色申告をしている中小企業などに欠損金(赤字)が生じた場合、その欠損金額を前事業年度以内に繰り戻して法人税額の還付を請求できます。
業績が悪かった事業年度に会社のお金がなくなるのを防げるほか、使い切れなかった欠損金は繰越控除できます。
ただし、欠損金の繰戻しによる還付が適用されるのは要件を満たした一部の事業者のみです。また、還付請求できるのは法人税および地方法人税のみで、法人事業税や住民税は対象外となることを留意しておきましょう。
25.自宅の光熱費や水道代を按分して経費計上する
自宅を会社の事務所にしている場合、光熱費や水道代を按分して経費に計上すれば、法人税を抑えられるため、会社から余分にお金が減るのを防げます。
税務署に経費と認められるには、事業に必要だと判断してもらえるような金額を計上することがポイントです。不当に高額な料金を計上すると、経費として認められない可能性が高いので、注意が必要です。
また、自宅を会社名義の社宅にしている場合、光熱費などは従業員が負担するものとされているため、経費に計上した分が給与として課税対象になります。
26.領収書や契約書、請求書をPDFに変える
印紙税とは、印紙税法で定められた課税文書に対して課される税金で、紙による領収書や契約書、請求書が対象なので、PDFなどの電子データに変えれば収入印紙を貼り付ける必要がなく、節税効果を期待できます。
印紙税は課税文書に記載された金額が大きいほど高額になります。そのため、高額な取引をしているほどPDFにすることで、節税効果は大きくなります。ただし、領収書などをPDFに変えるには、発行者と受領者双方の合意が必要であり、事前に交渉しておかなければなりません。
とはいえ、昨今はペーパーレス化が進んでおり、さまざまな企業で電子データでのやり取りが増えています。節税の効果はもちろん、取引先とのコミュニケーションがスムーズになるように、できるだけ早い段階でPDFなどの電子データに慣れておくことをおすすめでします。
27.除却損を計上する
固定資産除却損とは、事業をおこなう中で不要になった固定資産を廃棄処分する際に生じる損失のことです。
除却損は特別損失に計上できるため、その年の節税効果が期待できます。
しかし、対象となる固定資産は限られており、一定の条件を満たしたソフトウェア以外の無形固定資産や投資目的有価証券などは含まれていません。
まとめ
フリーランスから法人化すると、負担しなければならない税金の種類が変わります。
報酬は役員報酬となるので、個人には所得税や住民税がかかるほか、法人には所得に対して法人税がかかります。
とはいえ、法人にはさまざまな節税対策があり、しっかりと対策することで、大きな節税効果を期待できるでしょう。法人税の負担は会社経営を圧迫することもあるので、日ごろから法人税を念頭にして経営を進めることが大切です。
さらに、個人の収入にも税金がかかることを理解し、どれくらいの役員報酬に設定するのか、個人ができる節税対策はないのかなども考えておくといいでしょう。