法人とフリーランスにはどのような違いがあるのか疑問に思われている方が多いのではないでしょうか。両者にはどのような違いがあるのかを把握したうえで、法人化するべきか、フリーランスのままかを選択するのも一つの方法です。
そこで今回は、法人とフリーランスの違いに加え、法人化するメリットについて解説します。
ココがポイント
フリーランスが法人化すると社会保険に加入できる
フリーランスが法人化すると融資を受けやすくなることがある
法人化は継続する覚悟が必要
フリーランスと法人の違いとは?
フリ ーランスと法人の大きな違いは、法人登記をしているのかという点です。法人登記をしていれば、権利や義務などを持つ法律上の人格を認められた組織となります。また、法人登記には資本金の他に登記に費用が発生するため、事前に準備が必要です。
一方、フリーランスは税務署に開業届を提出した上で業務を開始した個人を指します。
法務局へ設立登記をする必要がないので、設立費用だけでなく、資本金も必要ありません。
そのほか、フリーランスと法人とでは、納める税金の種類などに違いがありますが、大きな違いとして「社会的な信用度」が挙げられるでしょう。
国内の企業の中には、フリーランスではなく法人としか取引しないといった企業も少なくありません。もちろん、昨今はフリーランスが認知されており、社会的地位の確立に向けて、さまざまな活動がおこなわれています。
とはいえ、やはり法人を対象にした融資制度やクレジットカードの発行、さらに法人のみとしか取引しないなど、フリーランスとの違いが顕著になって表れていることも珍しくありません。
フリーランスが法人化する7つのメリット
フリ ーランスが法人化するメリットを解説します。法人化することで得られる節税方法や経費についての紹介、また社会的地位の向上や法人クレジットの利用など、事業拡大にも役立つポイントも見ていきましょう。
役員報酬を経費計上できる
フリーランスが報酬を得た場合、売上から経費を差し引いた所得が所得税の課税対象となります。
所得税は所得が増えるほど、納税額が高くなるので、収益が大きくなるほど納税額が高くなります。
一方、法人の場合、自身の報酬は役員報酬となり、会社から個人に対して給与を支払っていることになるので、その分も経費に計上できます。
さらに、家族が仕事の手伝いをしていたり、一緒に働いていたりする場合は、従業員または役員と見なされ、報酬を支払う必要があることから、その分も併せて経費となります。
なお、賞与や退職金も条件によっては経費の対象となるので、報酬に関わる費用がすべてを経費にできれば、フリーランスよりも大きな節税効果を期待できるでしょう。
社会保険に加入できる
フリ ーランスは、国民健康保険、国民年金に加入するのが一般的です。
まれに、職種によっては組合があり、その組合に加入することで組合が運営する健康保険に加入できる場合もあります。
たとえば、文芸や美術、映画といった職種のフリーランスは「文芸美術国民健康保険組合」に加入できます。ただし、日本在住であるなどの加入条件や、団体に加入する際年会費が必要になるため注意が必要です。
一方、法人化すれば社会保険への加入が義務付けられています。年金は厚生年金への加入となるので、国民年金だけでのフリーランスと比べると、将来受給できる年金額に大きな差が出てくるでしょう。
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生命保険に法人名義で加入できる
フリ ーランスが生命保険に加入する場合は、個人名義での加入となるので保険料を経費にすることはできません。
たとえば、加入理由が事業でできた借金の残債を賄うためや、運転資金の足しにという理由であったとしても、親族が受取人になればプライベートな支出とみなされるのです。
一方、法人は法人名義で生命保険に加入でき、保険料を損金算入できます。昨今は、さまざまな保険会社から法人を対象にした生命保険商品を展開されており、中には内部留保を確保できる積み立て式の保険もあります。
経費にできる範囲が広がる
経費にできる範囲が広がるのも、法人化する大きなメリットです。
フリーランスの場合、家庭用と事業用の経費を切り離すことが難しく、計上できるものに限りがあります。
これに対し、法人では、すべての事業活動に支出したものを経費として計上するのが一般的です。
自宅兼事務所で利用する水道光熱費や、仕事で使用する車やバイク、ガソリン代、メンテナンス費用なども経費に計上できることから、法人の所得が減り、節税を期待できます。
社会的信用を得られる
フリーランスという肩書の認知度が広まっているとはいえ、法人と比べる社会的信用はまだまだ低いというのが一般の常識でしょう。
実際に、フリーランス時代には契約を取れなかった案件を、法人化することで、契約できたという話も珍しくありません。
また、銀行で融資を受けるときは、法人を対象にした融資や商品を利用できるので、選択肢が広がり、フリーランスよりも融資を受けやすくなる可能性があります。
税負担を抑えられる
税負担を抑えられるのも、フリーランスから法人化する大きなメリットといえるでしょう。
フリーランスが納税する所得税は、所得が増えると、どんどん納税額が増えます。
一方、法人が納税する法人税は税率が2段階のうえ、最高税率が所得税より低いため、所得によっては税負担を抑えらます。
法人用クレジットカードを作成できる
フリ ーランスでも個人用のクレジットカードを作成できますが、法人用カードとは異なります。
法人用クレジットカードを利用すると、経理業務の効率化が図れ、代表者および経理担当者の負担が軽減されるでしょう。
たとえば、法人カードで利用した分は法人口座から引き落とされ、クラウド会計ツールと同期することで、支払金額ごとの仕訳が自動的に入力されるといった使い方ができます。従業員が増えれば、従業員用のカードも発行でき、管理しやすくなるといったメリットもあるでしょう。
フリーランスはどんな人におすすめ?
フリーランスとして活動しているものの、法人化するべきか悩んでいる方もいるでしょう。
そして、どのような人がフリーランスとして活動したほういいのか、疑問に思われている方も多いのではないでしょうか。
ここでは、法人化せずに、フリーランスとしての活動がおすすめな人の特徴を紹介します。
やった分だけ収入が欲しい人
法人の役員報酬は、事業年度が始まって3カ月以内に決定しなければならず、期中は役員報酬の額を変えられないので、毎月一定額しか報酬を得られません。そのため、売上が多い月や低い月があったとしても、毎月固定の報酬しか得ることができないのです。
しかし、フリーランスは、毎月の売上に合わせて自由に自分の取り分を決められます。成果を出した分だけ対価を受取りたい人は、法人ではなくフリーランスがおすすめといえるでしょう。
法人税を支払いたくない人
法人税は法人の所得に応じて支払い額が変わりますが、たとえ所得が0円以下で赤字であったとしても、最低7万円の法人税を支払わなければなりません。
法人にかかる基本的な税は、法人税・法人住民税・法人事業税・特別法人事業税・消費税の5種類がありますが、中でも法人住民税のうち、均等割については所得に対する課税ではなく、会社の規模に応じて納税額を決められるのです。
そのため、赤字であったとしても、毎年7万円の納税義務が発生します。
しかし、フリーランスであれば税額は累進課税方式で算出されるため、赤字だった場合に課税される心配はありません。したがって、法人税を支払いたくない人は、フリーランスとして活動するのがいいでしょう。
法人化する注意点
フリ ーランスが法人化した場合、社会的な信用度が増したり、税負担を抑えられたりと多くのメリットがあります。
その反面、法人設立に必要な登録免許税、業績に応じて発生する法人税、また社会保険料は労使折半で負担となるため、保険料の事業所負担分など、今までになく係る費用が多く存在します。
さらに、一度法人化すると、法人を解散するときも費用と手間がかかるため注意が必要です。解散・清算結了の登記が必要な上、税務上も解散・清算に伴う申告や納税が必要になります。
まとめ
フリーランスは税務署に開業届を出している人を指し、法人化とは法人登記しているかの違いであります。
フリーランスが法人化すると、社会保険に加入できたり、法人名義の生命保険に加入できたりなど、さまざまな恩恵を受けられます。
しかし、法人化にはデメリットがあるのも事実です。さらに、事業を長く続けていくと、さまざまな危機に直面することもあるでしょう。
フリーランスから法人化する場合は、継続する覚悟が必要となります。赤字でも法人税を負担しなければならなかったり、毎年の決算処理もしなければならなかったりします。
損得勘定も大切ですが、事業を継続する覚悟を持って法人化に踏み切ることも、大切といえるでしょう。